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作文のお題は『ダカーポ』で【新保信長】 連載「体験的雑誌クロニクル」29冊目

新保信長「体験的雑誌クロニクル」29冊目

 

 取り扱う話題の主要ラインナップは、新聞、雑誌、本、テレビ、ラジオ、CM、プロ野球、そして“エロ”。要はおっさんサラリーマンの関心事ということだ。創刊号の「ノーパン喫茶崩壊以後の経営努力」に始まり、「ラブホテル消し忘れビデオ鑑賞記」「作家別比較 ポルノ小説の言語感覚」「主婦出演のラジオ番組のセックス度」「『性感帯』論争史の35年」「わいせつ罪容疑本の摘発史」「スポーツ各紙駅売り版ピンク面の勝負手」「ピンク映画のタイトル雑学」「セックス業界・おんな仕掛人」「女流作家の性描写を比べてみる」「最新性教育映画の実情と限界」……と、特に最初の2~3年はエロ特集が頻出する。それも露骨なエロ企画ではなく、“現代社会を読み解く”風を装っているところが涙ぐましい。

「本」や「健康」といったコーナーと同列に「性」というコーナーもあった。連載においても、エロ雑誌やポルノ小説の濡れ場を抜粋する「くらいまっくす」、翻訳家の小鷹光信による「ポルノ英語講座(のちに和英ポルノ小辞典)」は名物コーナーとして長く続く。

 私が『ダカーポ』を一番よく買っていた大学3~4年生の頃にはエロ特集は鳴りを潜めていたが、「くらいまっくす」と「和英ポルノ小辞典」は健在だった。その頃は130ページで200円。キャッチコピーは創刊時のものから「『現代』が3時間でわかる情報の流通マガジン」に変わっていた。3時間というのは当時の東京-大阪間の新幹線の所要時間に合わせたのか。昨今のコスパ、タイパ的な風潮を先取りしていたとも言える。 

 記憶に残っているのは、やはり本と雑誌の特集だ。100号「’85週刊誌目次頻度を集計する」(1986年1月5日号)、106号「雑誌の進化論」(同4月5日号)、110号「本と雑誌の特集号」(同6月5日号)など。もともと雑誌好きとしては手が伸びるテーマであるが、就活対策的な意味も感じていたのだと思う。102号「出版社のつくり方」(同2月5日号)、121号「雑誌編集者って何だ」(同1119日号)なんかは明らかにそれ目的で買っている。

 いくらボンクラ大学生でも記事を鵜呑みにするわけではないが、小出版社の社長たちの言葉にうなずき、「マンガ編集者残酷物語」に苦笑する。そういう業界研究的な面だけでなく、「『現代』が3時間でわかる」情報クリッピングの部分でも、何となく役に立つような気がしていた。「4大紙社説テーマ頻度」「現代用語事典」「情報感度テスト」などは、いかにも時事問題対策になりそう。同種のクリッピング雑誌としては『新聞ダイジェスト』(新聞ダイジェスト社/1967年創刊)もあったが、それよりカジュアルで値段も安く娯楽要素もあり、手に取りやすかった。

 

左上から時計回りに『ダカーポ』(マガジンハウス)1986年2月5日号(102号)、4月5日号(106号)、6月5日号(110号)、11月19日号(121号)

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新保信長

しんぼ のぶなが

流しの編集者&ライター

1964年大阪生まれ。東京大学文学部心理学科卒。流しの編集者&ライター。単行本やムックの編集・執筆を手がける。「南信長」名義でマンガ解説も。著書に『国歌斉唱♪――「君が代」と世界の国歌はどう違う?』『虎バカ本の世界』『字が汚い!』『声が通らない!』ほか。南信長名義では『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』『1979年の奇跡』など。新刊『漫画家の自画像』(左右社)が絶賛発売中です!

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